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衛生士ブログ-DH天野


2017.03.26

こんにちは 歯科衛生士の天野洋子です。今回はステファンカーブについてお伝えします。
ステファンカーブという言葉をご存知ですか?この理論を知っておくだけであなたの歯がむし歯から守られる可能性がグッと急上昇します。
ステファンカーブとは歯垢の中のpH濃度を飲食後から測定していったものをいいます。お口の中はpH6.8でほぼ中性の状態を保っています。しかし飲食を行うと、むし歯菌の出す酸によりお口の中のpHが酸性に傾いてしまいます。これが元の中性に戻るまでに要する時間を表した曲線がステファンカーブといいます。この曲線を発見した 、stephanらは唾液の緩衝作用(お口の中の状態を中性に戻そうとする働き) を実証するために、人の厚く堆積したプラーク内に微小電極を挿入し、10%グルコースで先口した際のプラーク内pHの変化を調べました。洗口直後にはエナメル質が溶け出す酸度(臨界pH)に低下しましたが、約20分後には再上昇して60分後には元のpHに回復しました。このステファンカーブは『エナメル質が脱灰されるpH値(臨界pH)』『約20分後に臨界pHから脱する』『元の中性に戻るのに約1時間かかる』ことがわかります。
臨界pHとは

歯の最も強度の高い歯の表面、エナメル質が溶け出す酸度のことをいいます。(エナメル質が溶け出すことを脱灰といいます)歯が溶け出す酸度は5.5以下です。この値を下回ると歯の表面からカルシウムイオンやリン酸イオン等のミネラルが溶け出ます。歯が溶け出すことで起きる酸蝕症はこの臨界pH以下の飲食物を多くとるとなる症状です。(食事以外の要因では、酸の多い職場で働いている方や、胃酸で歯が侵食されて起こるケースもあります)

酸の強いレモンpH2.0~3.0

食酢pH2.4~3.0  ワインpH3.0~3.7等を多く摂るとそれだけお口の中のpH値が元に戻るのにも時間がかかります。
再石灰化とは

溶け出した歯の表面エナメル質が元の状態に戻ろうとすることを再石灰化といいます。唾液の機能としてこの再石灰化促進作用もあります。唾液の中には歯の結晶成分である『リン酸カルシウム』に対して、『カルシウムイオン』と『リン酸イオン』が過飽和の状態で含まれています。歯の表面が脱灰するとこれらのイオンがエナメル質表層下に析出し結晶性を向上させて再石灰化が起きます。常に歯の表面では、脱灰と再石灰化が起きています。再石灰化がきちんと行われていればむし歯になることはありません。
お口の中が酸性に傾いた状態で、歯ブラシでゴシゴシすると歯の表面が削れる
臨界pH5.5以下の状態、食事を終えてすぐの状態で歯を磨くと歯の表面が削れてしまう可能性があります。たまに歯の着色汚れが取れるからという理由でレモン汁を歯ブラシにつけて磨く方や、歯茎が引き締まるからと梅干しをブラシにつけて磨く方がいますが、それは歯の脱灰を促進して積極的に歯を酸蝕症にしているような状態です。また、歯磨き剤の中に研磨剤が含まれている場合や、ブラッシング圧が強い人が食後すぐに歯磨きをすると同じように酸蝕症のリスクをあげることになります。どの程度時間を置くと酸蝕症のリスクの少ないブラッシングになるのでしょうか。
食後約30分程度時間をおいてからの歯磨きがお勧め

臨界pHを脱するのには約20分必要となります。そこから元のpHまで回復するには約60分を要します。むし歯治療の少ない通常の方は、食後30分~1時間空けてからの歯磨きが一番リスクの少ない歯磨きのタイミングになります。
むし歯リスクの高い人(むし歯治療経験の多い方)や酸性を多く含む食事が好きな方
このような方はむし歯リスクが低い方に比べるとpHが元の状態に回復するまでに時間がかかります。その間お口の中のpHは酸性に傾いたままになってしまいます。そうなると次の食事まで十分な時間をおいたとしても歯の再石灰化の時間が短くなってしまいます。それなので食後お水で洗口して、早めにお口の中の状態を中性に戻してあげると臨界pH以下で歯が脱灰される時間の短縮につながります。
ステファンカーブ  まとめ
人の唾液には『希釈洗浄作用』(お口の中を自動的にきれいにしてくれる働き)『抗菌作用』(細菌の動きを鈍くする、静菌作用)『再石灰化促進作用 』等お口の中を良好な状態に保つための機能が多く備わっています。プラークコントロールを向上させるために歯ブラシを変えたり、むし歯予防効果の高い歯磨き剤を使用したり、むし歯になりにくい甘味料を使ったり等、むし歯予防のアプローチ方法は様々ありますが、唾液の機能を理解し、むし歯を作りにくいように口腔内環境を整えたり、その機能を十分発揮させるために食事の取り方や間食の仕方、歯磨きを行うタイミングを変えていくことはとても効果的で実践しやすいむし歯予防方法だと思います。